森岡毅さんの「強みの見つけ方」を仏教で分析——人は名詞ではなく、動詞である

森岡毅さんの「強みの見つけ方」を仏教で分析——人は名詞ではなく、動詞である 仏教

USJを再建した男の、キャリア論

今回の「本×仏教」は、USJをV字回復させた伝説のマーケター・森岡毅さんの教え(『苦しかったときの話をしようか』の骨格)です。資本主義は残酷である。弱みの克服はやめて、強みだけを磨け。自分のタイプに合う土俵を選べ——。

一見ドライなキャリア論ですが、仏教で分析すると、驚くほど深いところで教えと噛み合います。順に見ていきます。

①「無知に罰金」——愚痴に課税される世界

森岡さんは、資本主義を「無知であることに罰金を科す仕組み」と喝破します。労働の税率と資産の税率の差、資本家が労働者を働かせて儲ける構造——ルールを知らない人は、知らないというだけで払い続ける、と。

このブログの読者なら既視感があるはずです。畜生界の記事で書いたとおり、仏教では仕組み(因果関係)がわからないことを愚痴と言い、愚痴の人はぼったくりや詐欺に引っかかる、と教えます。資本主義が愚痴に「罰金」を科すのは、詐欺師が愚痴の人を狙うのと同じ理屈です。世界の実相をあきらかに観る(諦観・正見)ことが、身を守る第一歩——2500年前から変わらないルールです。

②人は名詞ではなく、動詞である

本書の白眉は、強みの見つけ方です。「好きなもの(名詞)」ではなく、その中のどんな行動(動詞)にワクワクするかを見よ、と言います。同じ「ゲームが好き」でも、人と対戦するのが好きなのか、黙々とレベルを上げるのが好きなのか、戦略を練るのが好きなのかで、その人の正体はまったく違う——。

これは、仏教の人間観そのものです。仏教は諸法無我——固定した「自分」という実体はない、と説きます。では人とは何か。行い(業)の束です。心の行い(意業)、口の行い(口業)、体の行い(身業)。仏教は2500年前から、人を名詞(肩書・属性)ではなく動詞(何をしているか)で定義してきました。「あなたは何者か」という問いに、名詞で答えられなくても落ち込む必要はありません。問いの立て方が間違っているのです。「あなたは何をしているときに生きているか」——これが正しい問いです。

③「努力せず成果が出ること」の正体

森岡さんは、強みとは「たいして努力していないのに、なぜか成果が出ること」であり、それは神様からの授かりものだと言います。

仏教で読むと、ここは二層に分けられます。

まず、観察できる層。「努力していないのに」は、実は錯覚を含んでいます。戦略を練るのが好きだった子は、好きだから無意識に何千時間も反復していた——本人が努力と認識していないだけで、種まきは大量に行われているのです。森岡さんが「子どもの頃に夢中になったこと」を掘れと言うのは、そこがすでに種まきの現場だったからです。

それでも説明が尽きない「生まれつきの差」があります。仏教はここを三世因果で説きます。「過去の因を知らんと欲すれば、現在の果を見よ」——輪廻の中で積み重ねてきた業(宿業)が因となり、今生の縁と揃って、果として現れている、と。つまり強みは、神様の気まぐれな贈り物ではなく、自分の畑の、古い履歴なのです。

この見方の実利は大きい。授かりものなら、当たった人は誇り()、外れた人は僻むしかない。業の履歴なら、誇る理由も卑下する理由もありません。やることは一つ——活かして返す(報恩)。それだけです。

④「炎タイプは水の中で戦うな」——縁を選ぶ

そして環境選び。森岡さんは、強みが強調され弱みが目立たない土俵を戦略的に選べ、と説きます。炎タイプが水の中で戦ってはいけない、と。

果y = 因a × 縁x。同じ因(強み)でも、縁(環境)が変われば果はまるで変わる——この式の教えそのものです。仏縁の記事で、良縁を取り入れ悪縁を取り除くのが廃悪修善だと書きました。弱みが強調される職場とは、あなたにとっての悪縁です。逃げるのではありません。畑を替えるのです。

思い出してください。布施には三田——種をまく畑を選んでいい、という教えがありました。ならば逆もまた真なり。自分という種にも、まかれる畑を選ぶ権利があるのです。

⑤仏教からの一言——強みで勝った、その先へ

ここまで見事に重なりましたが、最後に仏教から一つだけ補足を。

強みを磨き、良い土俵で勝ち、高い報酬を得る——その先に何があるでしょうか。それだけなら、家の長者(財と地位)止まりです。有無同然の記事で書いたとおり、有ることの苦しみが待っているかもしれません。

強みの最終的な使い道は、もう一段先にあります。強みとは、あなたが世界に布施できるもののリストです。授かった縁で人を喜ばせ、その対価で生かされ、余った分をまた次へまく——自利利他の循環に乗せたとき、強みは「勝つ道具」から「生きる意味」に変わります。森岡さん自身、その強みで部下や読者を照らし続けている人です。

まとめ

ルールを知る(愚痴を出る)。自分を動詞で知る(業として観る)。授かりに気づく(慢を離れる)。畑を選ぶ(縁を選ぶ)。そして強みを布施に変える(自利利他)。

残酷な資本主義の攻略法は、仏道の歩き方と、ほとんど同じ地図でした。あなたの動詞は、何ですか。今日も良い種を、良い畑にまいていきましょう。

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