はじめに
少し昔の話ですが、今でも役に立つと思うので書いてみます。
学生時代、友人Sに生徒会に誘われました。そのときの会話が、仏教の「自利利他」を考えるうえで非常に示唆的だったので紹介します。
友人Sとの会話
友人S「生徒会に入らない?部費の使い道を決められるから、自分の部活に部費を多く回せるよ。」
自分「うちの部活(a部)には増やさなくていい。今できることは部費がなくても強くなれる方法があるし、むしろ他の部活(b部)に多めに回してほしい。うちは減らしてもいいくらい。」
友人Sの発言は一見合理的です。生徒会に入ったのだから、自分の部活を優遇する——よくある発想です。
しかし自分の考えは違いました。自分の部活よりも、部費をより上手く使える部活に渡した方がいい、ということです。
仏教でいう「敬田」
仏教では、自分よりも使い方が上手な人に布施をすることを**「敬田(きょうでん)」**といいます。
布施は誰にでもすればいいわけではなく、相手を選ぶことが大切です。より大きな結果を生み出せる相手に渡すことで、回り回って自分にも良い果が返ってきます。
部費をb部に渡すと、a部にどう返ってくるか
「b部に部費を多く渡す」という選択が、長期的にa部にどう返ってくるかを考えてみましょう。これはあくまで一つのシナリオですが、正のサイクルのイメージとして読んでください。
① b部に部費を多く配分する
② b部が大会で成績を伸ばす
③ b部目的の入学志願者が増える
④ 受験者数が増えた分、学校の収益が増える(定員数は固定のため)
⑤ 学校の収益が増えれば、部費への割り当て総額も増える
⑥ b部に入部したがレギュラーになれない生徒が退部する
⑦ その生徒たちがa部を含む他の部活に流れてくる
⑧ b部を目指していた生徒は身体能力が高い傾向があるため、弱小部活では即戦力になりやすい
⑨ 活躍する部活が増え、学校全体の価値が上がる → ①に戻る
時間はかかります。しかし、正しいシステムを一度作れば、自分たちが卒業した後も正のサイクルが維持されます。
自利利他——他人の利益が自分の利益になる
これが仏教でいう**「自利利他(じりりた)」**の実例です。
他人(b部)の利益を優先することが、長期的には自分(a部)の利益になって返ってくる。部費を自分の部活に貯め込むこと——仏教では**「慳貪(けんどん)」**(貪り惜しむこと)といいますが——は、短期的には得に見えても、学校全体の底上げにはつながりません。
友人Sの発言が間違っているわけではありません。自分の部活が強くて、部費をさらに有効活用できるなら、そこに集中するのは合理的です。問題は、そうでない状況で同じことをすることです。
組織の「思想」を見抜く目
ところで、この学校の校長は「優秀な生徒は勝手に育つ」という理念を持っていたそうです。
一見、生徒の自立を尊重しているように聞こえます。しかしこれを因果の道理で考えると、**「育てる因を持たない組織が、果(成果)だけを期待している」**状態ではないかという解釈もできます。
これは組織に限らず、よく見られるパターンです。因を出し惜しみしながら果だけを求める——仏教的には貪欲(テイカー)の思考です。
学校・会社・コミュニティを選ぶとき、その組織が正のサイクルを意識して動いているかどうかを見抜くことが大切です。 そのためには、自分の頭でシステムを理解する力が必要になります。
身近な例——S&P500とオルカン
同じ発想は投資でも見られます。
S&P500や全世界株式(オルカン)への投資は、「より上手く使える企業(b部)に資金を渡す」行為です。投資された企業がサービスを向上させることで、私たちの生活が豊かになり、結果として株価も上がる——これも正のサイクルです。
仏教的にいえば、敬田への布施です。
仏教では「廃悪修善」という
負のサイクルをやめ、正のサイクルを作ることを仏教では**「廃悪修善(はいあくしゅぜん)」**といいます。
生徒会であれ会社であれ、組織の役割は正のサイクルを設計・維持することです。
- 生徒会:部費の正のサイクルを作る
- 教師陣:教育の正のサイクルを作る
- 会社:収益と人材の正のサイクルを作る
能力の高い個人がいなくても、正しいシステムがあれば一定の品質は保てます(マニュアルのようなものです)。逆に、優秀な個人がいてもシステムが負のサイクルなら、組織全体は悪化していきます。
まとめ
部費の話から始まりましたが、本質はシンプルです。
短期的な自分の得より、長期的な全体の利益を優先する。
そのためには、布施する相手を正しく選ぶ。
これが自利利他であり、仏教が説く廃悪修善の実践例です。
因果の道理から見れば、正のサイクルに投じた因は必ず正の果として返ってきます。時間はかかっても、システムを正しく設計した組織は長期的に強くなります。
生徒会に限らず、何かの組織に関わるときにこの視点を持ってみてください。


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