趣味仏教を説明してみた4

趣味仏教を説明してみた4 仏教

人間界という苦しみの世界——四苦八苦を数式で読む


前回のおさらい

前回は、六道を抜け出す方法として自力と他力の考え方を見ました。

自力とは経験の蓄積によって気づくこと、他力とは阿弥陀仏の本願に任せること。どちらの道においても、因果の道理を理解することが出発点になります。

今回は、人間界とはどのような世界かをより深く掘り下げます。


「他力本願」という言葉の誤解

少し前回の補足をします。

「他力本願」という言葉は、漫画やアニメで「自分は何もせず他人に任せること」として使われることが多いですが、これは間違いです。

  • 他力=阿弥陀仏のはたらきのこと
  • 本願=すべての衆生を救うという阿弥陀仏の誓い

「他力本願」とは、その誓いに身を任せるということです。「自力本願」の「自力」は、阿弥陀仏の本願を疑う心(疑情)を指します。

阿弥陀仏は仏の中の最上位であり、因果の道理から見ても他力の頂点に位置づけられます。


数学ベースで考える、この記事のスタンス

この記事は仏教を数式・因果関係で読み解くという切り口で書いています。信仰の話というより、思想・哲学・論理として面白いと感じているのが出発点です。

数学を否定できない以上、そこから導かれる因果の道理も否定できない。現実的な解釈としては、欲に振り回される人間がセルフコントロールするために、経験の蓄積(帰納的アプローチ)と因果関係の理解(演繹的アプローチ)の両方を活用するのが現実的ではないかと考えています。

ちなみに、昨今の企業会計でも「帰納と演繹の折衷型が最適解」とされています。両方のいいとこ取りは、あながち間違っていないかもしれません。


肉体は「一生乗り換えできない車」

仏教では、肉体は心の所有物といわれます。所有物には期限があります。

投資家のウォーレン・バフェット氏が、こんな趣旨の発言をしています。

「もし一生に一台しか車に乗れないとしたら、あなたはその車を大切にするだろう。オイルをこまめに換え、慎重に運転するはずだ。心と体も同じで、一生に一つしか持てない。」

数式で表せば、肉体とは ∫(0 → 死)x(肉体)dt です。生まれてから死ぬまで、肉体という縁が積み重なり続けている状態です。


人生は四苦八苦——8つの逃れられない苦しみ

この世界は仏教で娑婆(しゃば)と呼ばれます。「娑婆」とは「堪忍土(かんにんど)」、つまり耐え忍ばなければならない世界という意味です。思い通りにはいかないのです。

仏教では、いつでもどこでも誰もが経験する8つの苦しみが教えられています。これを四苦八苦といいます。


人生苦——存在することの苦しみ

① 生苦(しょうく)
生きることの苦しみ。式でいえば「0→」の部分です。この世に生まれ、生きていくこと自体に制限と負担が伴います。

徳川家康「人の一生は重荷を背負って遠き道をゆくがごとし」

その重荷を下ろすことはできません。

② 老苦(ろうく)
老いることの苦しみ。時間(dt)とともに、心身は変化していきます。心理学の研究では「経験にも賞味期限がある」といわれています。

③ 病苦(びょうく)
病の苦しみ。突然やってくるように見えて、実は少しずつ積み重なってきたものです。生まれた瞬間から死ぬまで、病気のリスクがゼロになることはありません。

④ 死苦(しく)
死にゆくことの苦しみ。「→死」の部分です。死が近づくと、必死に積み上げてきたものが何の役にも立たないと感じる瞬間が来ます。「自分の人生は何だったのか」という虚しさ——これをスピリチュアルペインといいます。


生活苦——関係と欲望の苦しみ

⑤ 愛別離苦(あいべつりく)
愛する人やものとは、必ず別れが来ます。縁(+x)の終わりです。愛が深いほど、別れの苦しみも大きくなります。

⑥ 怨憎会苦(おんぞうえく)
嫌いな人・憎む相手とも、必ず出会わなければならない苦しみです。縁(-x)の始まりです。

⑦ 求不得苦(ぐふとくく)
求めるものが得られない苦しみ。欲しいx自体が手に入らない状態です。欲望に限りはないのに、現実には様々な制限があります。

⑧ 五蘊盛苦(ごうんじょうく)
肉体を持って存在することそのものの苦しみです。五蘊とは肉体・感覚・認識などの総称で、∫(0 → 死)x(肉体)dt そのものといえます。

肉体があるがゆえに、「何のために生まれ、何のために生きるのか」という問いが生まれます。


苦しみは絶え間なく続く

① 〜 ④が**「人生苦」、⑤ 〜 ⑧が「生活苦」**です。

これらの苦しみは特別な状況ではなく、生きている限り誰にでも、常に続いているものです。上の式のように、肉体がある限り積分は続きます。

肉体には六根という感覚器官があり、これが煩悩と深く関係しています。


次回は、その煩悩について掘り下げます


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