株式第一主義(我利我利)からステークホルダー資本主義(利害関係者)の自利利他へビジネスの流れが変化している。
世界経済の主要テーマの一つです。アメリカの大手企業経営者の作る最大の経済団体ビジネスラウンドテーブルに企業の目的に関する声明を発表しました。内容は、
- 顧客には期待を超える価値を届ける。
- 従業員には、適正な報酬+有意義な福利厚生+スキルアップの訓練や教育。多様性、包摂性、尊厳、尊敬を育む。
- 取引先には、公正かつ倫理的に対応します。
- 地域社会を支援します。
- 株主には長期的な価値を提供します。
利害関係者全員幸せになりましょう、ということです。つまり自利利他です。
近江商人の「三方良し」という精神があります。買い手良し、売り手良し、世間良しという意味です。
近江商人商売十訓というものがあります。
- 商売は社会貢献が本質。利益はその結果である。
- 店の大きさではなく、場所の良否、場所の良否よりも、品物の良さが肝心。
- 売る前のお世辞よりアフターサービスが信頼と継続(リピーター)のカギ。
- お金よりも信用が商売の生命線。
- 無理に売るな、客の好むものも売るな、相手のニーズ(客のためになるもの)に応える。
- 単に良い品を売るのではなく、必要な時に提供することがさらに価値。
- ちょっとした心遣いが喜ばれる、何もないなら笑顔を景品にせよ。
- 正札を守れ、値引きは却って気を悪くするくらいがオチだ。
- 損益管理は必要だが、目先の利益ばかりを追ってはならない。
- お客様や時代の変化に柔軟に対応する。環境のせいにせず、常に創意工夫を。
1〜8までは、自利利他の精神、9は精進、10は自因自果。この十訓からも、近江商人が「長期的信頼・誠実・柔軟な工夫」を重視していたことが分かります。
この内容が前述のアメリカの経営者たちと重なるところが多いんです。
室町時代に、蓮如上人という方が親鸞聖人の教えを日本全国に伝えられた方として知られます。この方が近江の人たちに仏教の教え自利利他を伝えました。それに感動した近江商人たちは自利利他を商売の信条にしたんですね。それが、三方良しです。これが難しいんですよ。
昔からよくある話(現実でもドラマでも)として、自分(大企業)が相手(中小企業)の取引他者に無理難題を押し付ける、下請け叩きと言われますよね。材料を作らせて安く叩きます、「もっと安くしろ」と叩きます。世界情勢が上手く回っていないため大企業も倒産の危機になるとですね、その皺寄せを下請けに寄せるんです。「この金額まで下げないと取引自体を停止するぞ」と脅しをかけるんです。これは社会問題の一つにもなっています。取引企業としてこの大企業に取引を停止されると即刻倒産になりますから、この条件を飲まないと自分の会社が赤字になってしまう。この中小企業もやってはいけないんですが、不良品も混ぜて何とか原価を安くしようとするんです。そうなると商品は故障などが相次いで起こるわけです。不良品を回収しないといけなくなるわけですよね。原因を探ってみると中小企業の商品ということになり、その原因は大企業の資金繰りになりますよね。その結果大企業も倒産の危機になります。当然この中小企業も刑事事件になります。そうならないように、大企業と中小企業は密談(リコール隠し)をするわけです。自分たちが何も言わなければただの事故として世間(世間)をやり過ごせるから、と。やがて、内部情報により明るみに出るわけでて、大バッシングを受けるわけです。
毎年のようにありますよね。事故保身に走って自分さえ良ければいいでは返って苦しむだけです。三方よしは簡単ではないんです。口で言うは易く、行うは難しですね。
余裕がなくなると、他のことを考えられなくなるわけです。そうなると自分さえ良ければいいこう言う気持ちになってしまいますよね。
余裕がない時にこそこれができるかどうか、これが難しいんです。余裕がない時にできることが素晴らしいと言われます。
仏教では、「乏しき時に与えるは、富(豊かになって)みて与えるにまさる(素晴らしい)」と言う言葉があります。
「長者の万灯より、貧者の一灯」なんて言葉もあります。億万長者の万の灯火を与えた人よりも、貧者のなけなしの灯火の方が尊いんだ、と。これの意味するところは、豊かな時に与えることはそれなりの人ができますが、貧しい時に与えることはほとんどの人ができない、と言うことです。
まとめ:現実問題としていろいろ考えなければいけないんですが、仏教は心を見る教えですから、実践するかは状況によりますね。ただ、与える精神を種として行動しないと人生は良くならないのは真実でしょうね。難しいこと=尊い、三方良しはなかなかできることではないんですね。三方良しを貫くことは信用を積み重ね得ることになります。
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